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密着うどんづくり

手間隙を惜しまない麺職人の伝統の技と心

 五島うどんの美味しさの秘密は、熟練の麺職人が、時間と労力を惜しまず、丹精込めて生産することにあります。
 現在、製麺工程の一部は機械化されていますが、棒状の生地を2本の箸にかけて、手で引き延ばして紐状に束ねる作業を繰り返し、じっくりと熟成させて、細身ながらもコシのある麺にしていく伝統製法の基本は、千数百年の時を経ても変わりません。


1.ミキシング(練り上げ)

 厳選した小麦粉を、島のミネラル豊富な水と五島灘の海塩で練り上げます。
 塩分の濃度は、その日の温度と湿度に応じて加減しますので、麺職人の経験と勘が物を言います。
 練り上げたあと、しばらく寝かせて最初の熟成を待ちます。


2.足踏み

 昔は栴檀〈せんだん〉の木の台などの上に、練り上げた小麦粉を移し、500回ほど丹念に手や足を使ってならしていきます。
 だんだんと麺自体にコシが生まれるようになります。


3.切り廻し

 大きな円盤状になった生地の外側から、渦を巻くように包丁の刃を入れていきます。
 棒状になった生地は、大きな桶の中に渦巻き状に回しながら重ねていきます。


4.細目作業

 生地を一段巻くごとに、その表面に五島列島の特産・椿油を塗り、数段重ね合わせていきます。
 そのことで麺同士が付着しない効果があります。
 一昔前までは小麦粉をふりかける方法が一般的だったともいわれていますが、ここにも島に生きる人々の知恵が息づいています。
 直径40mmほどの麺を「大巻」と呼びます。


5.こなし作業

 麺を直径10mmになるまで、手で細くしながら切り廻しの作業を続けます。
 この過程でも、生地同士が付着するのを防ぐために椿油を塗ります。
 生地はこのまま寝かせて熟成させます。


6.かけば作業

 2本の木製の棒に、麺の太さが均一になるように少し引っ張りながら、数字の8の字にかけていきます。
 「ムロ箱」と呼ばれる箱の中で再び、じっくりと寝かせて生地がさらに熟成するのを待ちます。


7.小引〈こびき〉作業

 熟成した麺を200mmほどの長さまで引き延ばします。
 延ばしすぎると生地が膨れたり、途中で切れたりしますので、均一の麺になりません。
 ここでも熟練職人の腕が物を言います。


8.はたかけ作業

 麺を「ハタ」と呼ばれる干し具に木の棒ごとかけていきます。
 ハタも昔は、半農半漁の島の暮らしの中で、うどんづくりを営む各家ごとに手作りで行われていました。


9.乾燥作業

 上五島・船崎地区は晩秋から春先にかけて、冷たく乾いた北西の風が山を越えて吹き下ろし、麺を天日干しして乾燥させるには最適な場所でした。
 現在では、温度と湿度を厳重に管理した室内で丸1日をかけて乾燥させています。


10.こわり作業

 乾燥を終えた麺をハタから外して8等分に切り分けます。
 これで麺づくりは最終章を迎えますが、上五島にある麺工場では大昔から、これまでの手間隙のかかる作業が営々と続けられています。


11.結束作業

 8等分した麺を束ねて袋詰めしていきますが、異物の混入がないかどうか、職人の厳しい目が光ります。
 熟練すると、200gと300gを量を違えることなく結束することができるようになります。










取材日:2021年3月18・19日
撮 影:竹内 章