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【 Vol.5 】郷土への誇りと希望

島の子どもに郷土への誇りを育みたい=吉村氏

 吉村氏 加藤博士の「上五島が日本最古のうどん発祥地」という説については、実は2つほど、いまだ解明されていない問題があります。
 その1つは、遣唐使往来の時代に、ここ上五島で小麦が栽培されていたかどうか。平野の少ない島では、稲作よりも麦の栽培がいち早く普及したと推測されます。五島は昔から「麦の島」という言い伝えも残っていますが、果たして、真相はどうだったのか。
 もう1つは、この上五島に小麦を砕いて粉にする遣唐使往来時代の石臼が存在するかどうかです。
 将来、この2つの歴史の謎が解明されると、さらに島、いやいや日本中を揺るがす大発見になることは間違いないと思います。


 犬塚 研究者の皆さんの、これからの調査・研究の成果が待ち望まれますね。

 吉村氏 私も、加藤博士の学説を支持する一人として、これからの調査と研究の進展に大いに期待しています。そして何よりも、子どもたちには、この島の宝、五島うどんについてしっかりと学び、自分の生まれ育った郷土、上五島に対する誇りをはぐくんでほしいと心から願っています。
 それから、遣唐使が大陸から五島に伝えた、いまや日本遺産ともいうべき五島うどんが再び、日本と中国の文化交流の懸け橋になれば最高だろうなぁと、夢をふくらませているんですよ。


 犬塚 まったく同感です。今日、吉村さんの話をうかがいながら、先人がもたらしてくれた五島うどんの大切な伝統文化を受け継ぐ職人の一人として、郷土の発展に一層力を注ぎたいという思いを新たにしました。


(おわり)


【対談日/令和3年3月18日、場所/五島うどんの里「遊麺三昧」】

(編集:石田雅博 撮影:竹内 章)


Profile
吉村政德(よしむら・まさのり)
 昭和24年2月、長崎県新上五島町生まれ。國學院大學大学院文学研究科修士課程を修了し、同大學副手、長崎県神社庁参事、上五島町教育長を経て、現在、政彦神社宮司・鎮西大社諏訪神社宮司。上五島歴史と文化の会前会長。
 また、吉村氏は、五島列島で神職を中心に伝承されてきた「五島神楽」が2016年、国重要無形民俗文化財の指定を受けた際に中心的役割を果たすなど、郷土への貢献は多岐にわたっている。

吉村政德編著『五島うどんの御力(みりょく)-日本最古説を追って』(長崎新聞社刊、四六版・202ページ。1,650円〈税込〉)は、最寄りの書店、長崎新聞販売センター、長崎新聞社出版室で購入できます。


Profile
犬塚康彦(いぬづか・やすひこ)
 昭和32年3月、長崎県新上五島町生まれ。長崎県立上五島高等学校卒業後、福岡の船会社に就職。1年間、タンカーの乗組員を経験したのち、帰郷して祖父の代からの家業である製麺業を継ぐ。
 平成30年6月、五島手延うどん協同組合理事長に就任し、現在、3期目。